第2回「面格子の装飾付加についての一考察」

 面格子ファンクラブのメンバーが「基本形」と呼ぶタイプのものがあります。前回述べた面格子の役割からすれば、単純に長方形を組み合わせるだけでいいはずなのに、なぜかS字のような部品が付加されているものを良く見かけます。面格子としての本来の機能である防御力や強度の向上にさほど貢献するとも思えません。とするとこれはやはり「装飾」ということになります。ただ「装飾」としてみてみると、あまりに素朴で頼りない感じです。

 ある住宅地の中を歩いていたときにふと気づきました。そこは70年代初め(万博後、オイルショック前)に一斉に分譲された住宅地でした。当時の家が残っていたのですが、同じような家が並ぶ中、2階の窓の面格子の装飾を良く見てみると、家ごとにパターンが違うのです。さらに良く見てみると、装飾に使っている部品(S字のようなパーツ)は、大小のサイズ違いで2種類程度、その組み合わせ方で文様を変えていました。

 これはまったくの推測なのですが、面格子そのものに装飾用のパーツを溶接するのは住宅の建設現場(もしくはその近く)で行っているのではないでしょうか? 建築業者(工務店)は単純な長方形の面格子を仕入れて、それに独自のセンスでパーツを付加してから、窓に設置しているのでは思います。少なくとも私の脳内では、そんな作業風景が勝手に拡がっています。

 住宅そのもののデザインはそう変えるわけには行きませんが、せめて面格子の装飾くらいは一軒別に変えて個性を出そう、そんな職人さんの意気込み、もしくは遊び心を感じます(繰り返しになりますが、あくまで私の脳内で勝手に湧き出るイメージです)

 こういう装飾を付加した面格子の存在に関しては、地域差が激しいことが多くの会員からの報告で分かっています。古い民家が残っていても装飾付の面格子がまったくない地域もあります。逆に競うように素敵な面格子が軒を連ねる地域もあります。ひょっとすると、職人の流儀が地域別に違ったのかもしれませんし、熱心な工務店とそうでない工務店があったのかもしれません。

 最近建った家でも、同じような装飾付の面格子をみることがあります。ただ良く見てみるとパーツが溶接されているのではなく、もっとスマートに作られています。パーツの組み合わせたものが、最初から一体成型されているようです。同じ面格子でも、これらは「平成の工業製品」ですね。個人的には「昭和の工芸品」な面格子が好きです。

 そんな職人さんの心意気を感じる面格子ですが、実際にお住まいの方がどれくらい愛着をもっているかはまた別なようです。そこもまた、もの哀しく愛おしい面格子です。

 次回は、「パズル型」と呼ばれる、ダイナミックな文様の面格子の存在意義について考えてみます。

過去記事 第1回「面格子とは何か」
今回終了 第2回「面格子の装飾付加についての一考察」
次回予告 第3回「ダイナミックな文様の面格子について」