マザーウォーター

 「かもめ食堂「めがね」「プール」に続く第4弾。監督は変わっていますが、同じ企画のシリーズものとのこと。実は前作「プール」が個人的には少しなんだったので、あまり期待していませんでした。ところが、観てみるといい意味で期待を裏切られました、いいです。

 キャスト的には「めがね」とほとんど同じですが、小泉今日子永山絢斗の二人が新たに加わっています。舞台は京都なのですが、誰も京都弁を話しません。みな、どこからか来た人たちという設定のようですが、妙な関西弁もどきで話すよりずっといいですね。

 前3作同様、いやそれ以上に、ストーリーがあるんだかないんだか、緩やかな時間が流れていきます。今回のテーマは「この場所」なんだと思います。「なぜ、この場所なのか」「この場所だから」と登場人物が、みな繰り返します。「場所」を大事にするのはシリーズ共通だと思うのですが、今回はそれがより明確に前面に出ていると思います。

 少し前に、「かもめ食堂」の再映を観て、「やっぱり『かもめ食堂』が一番」と思ったところですが、本作にも共通する「妙な間」「心地よい空気」が漂います。「かもめ食堂」よりは主要な登場人物が多いので、前半少しざわつく気もしますが、一旦落ち着いてからはなかなか心地よいと感じます。

 私は、市川実日子の少しぶっきらぼうに語るせりふが大好きなのですが、今回は「やっぱり小泉今日子はかわいい」と強く感じました。観るまでは、この映画には合わんやろ、と思っていましたが、うまく溶け込んで新しい空気を作っていました。

 舞台が京都で、見たことのある景色が多いというのもあるかもしれませんが、現時点では「今年のベスト3候補」です。

(2010/11 京都シネマ