阪急電車 片道15分の奇跡

 私は、大阪でも東の端に生息しているので、阪急電車にはほとんど縁のない生活を送ってきています。そのため、阪急沿線にはなんの思いいれもありません。

 でも、この映画の原作「阪急電車」を読んだ際には、なんていいお話と感動したことを覚えています。読書記録を調べると、作者の有川浩さんの本はこれまでに16冊読んでますが、◎をつけたのは2冊しかありません。その内の1冊が「阪急電車」でした。

 ということで、夫婦そろって観に行ってきました(夫婦で行くと安く観れるので)。

 以下は、映画を観ての感想です。あまりネタばれにならないように気をつけてはいますが、まだ観ていない人に妙な先入観を植え付ける恐れはあります  (^^ゞ

 最初に感じたのは、タイトルが出るまでが長い、ということです。このお話のポイントは、阪急今津線の宝塚から西宮北口まで行って帰ってくるというところです。その電車に乗るところでタイトルが出るのですが、それまでに主な登場人物のバックグラウンドを説明する部分があり、これが結構長いのです。どんなお話か分かっている人にとっては、重要であり必要なこととわかっているので、逆にわくわく感が高まるのですが、まったく前提知識の無い人がみた場合には、どう捉えられるか微妙な長さだと思います。

 この映画で個人的に一番すごいと思うのは、配役の妙です。なんといっても、中谷美紀さんはすばらしいですし、彼女でなきゃ言えないようなせりふをさらっと言ってのけたりします。
 戸田恵梨香という役者は、あまり好きではないのですが、その好きになれない部分が目いっぱいうまく拡がっていて、妙な好感を持ってしまいました。
 南果歩さんは、こんな役もできるんだという発見です。おばちゃん役をするにはまだ早い気もするのですが、何の違和感も無く見事に演じきっています。

 軍ヲタのカップルについては、実に見事なアクセントになっています。この2人だけは関西出身ではないという設定だからなのか、この2人の出てくる場面だけ明らかにテイストが違います。一歩間違えば唐突なだけですが、剛速球が続いた後のチェンジアップのようによく効いています。

 そして、宮本信子さんです。おそらく、作者の分身としてお話の中に出てきているのではと思っているのですが、見事な立ち位置で他の登場人物に絡んできます。

 いくつものドラマが並行して同じ電車に乗り合わせて進行するなんて、まさしく「片道15分の奇跡」としか言い様がありません。

 実は、途中から涙が止まらなくなって号泣してしまいました。大杉漣が出てきたところでこらえられなくなったのです。

 この映画の撮影には、阪急が全面協力したとのこと。私は、電車のことはあまり詳しくないのですが、鉄ヲタな まっしゅさんが興味深い感想を書いておられました。

    まっしゅ★たわごと「映画「阪急電車」を見た♪」

 こんなのを読むともう一度映画を見直したくなってきます。原作読み返してからもう一度観てみたいとおもうのですが、こんなことを思うお話も珍しいです。

 今年はこれまでに観た6本ともとてもいい映画ばかりです。個人的には本数は少ないけど、映画の当たり年になる予感がします。

(2011年5月 TOHOシネマズ二条)