森崎書店の日々

 恋人だと思ってた職場の先輩にだまされていたことに気づき会社を辞めてしまう貴子。神保町にある叔父の古本屋の2階に住み込み、店番などを手伝うことにする。古本どころか、本などあまり読んだことも無かった貴子だが、店番の側ら読むようになっていく。

 叔父役の内藤剛史がとてもよく、一見古本屋の主人として毎日平穏に暮らしているように見えるが、過去には多くのつらい出来事があり、それを乗り越えて今日に至っていることを、少しずつ間接的に現していく。それが垣間見えるので、貴子への気遣いにもやさしさが感じられます。

 人生という長い階段の途中にある踊場。そんな日々があってもいいのかもしれません。でも、そんな日々はやがて終わりまた歩き出します。なんてことを感じた映画でした。

 映画の舞台になった神保町は、古本屋さんの街という印象しかありませんでしたが、映画の中では、本屋さんがあって、良い喫茶店があって、その街を愛する人たちがいる。そんな素敵な街だと思えてきます。もし、東京に単身赴任することがあったら、神保町に住みたいと思ったくらいです。

(2010/12 テアトル梅田)