路地裏ビルヂング(三羽省吾/文藝春秋)

路地裏ビルヂング

路地裏ビルヂング

 路地裏の6階建ての雑居ビルの各階の店子が順に語る連作短編。時系列になっていて、前編の後日談を間接的に拾うところなど、お話が多面的になって膨らんでいく。

 著者の過去の作品を読んでも感じたが、登場人物の性格設定がメリハリがつきすぎるほど明確で、登場人物が多いにもかかわらず、全体としてのスピード感がよく出ている。個々の人物設定だけをみるとありがちなものが多く独自性は少ないが、組み合わせとしての面白さがあるため、読んでいていやな感じがしない。

 全編通じて登場する謎のお姉さんの存在や、最終章のまとめ方などシリーズ物のドラマを見るようで、読み進むにつれ楽しくなるお話。