トイレット

 荻上直子監督の最新作、私にとっては「バーバー吉野」「かもめ食堂「めがね」に続く4作目。ずべてに共通して、もたいまさこが出演している。

 映画の舞台はカナダのトロントで、出演者も日本人はもたいまさこだけ、せりふもすべて英語となると、日本映画といっていいかどうかも分からない。

 英語がまったく話せない日本人の祖母と、3人の孫の奇妙な生活を描いた映画。3人の孫たちは、母がなくなるまでそれぞればらばらに生きてきた感があるが、一緒に住むようになり、互いに関わりを強くしていく。

 ピアノの天才だがパニック障害の長男、生真面目だが、人間味にやや欠ける次男、世間に斜に構えた末っ子の妹、と少なからず問題を抱えた3人兄妹の生きるさまはどれも極端であるがゆえに妙に共感を覚える。そしてなんとも不思議な「ばーちゃん」こともたいまさこ演じる祖母。

 重苦しいはずが前編楽しく見ることのできる不思議な感覚は期待通り。終わり近くで、予想通りの展開とは言うもののそれでも不覚にも号泣しそうになる。「トイレット」って妙なタイトルだと思ったが、それも納得。


(2010/08 京都シネマ