活版印刷三日月堂 雲の日記帳(ほしおさなえ/ポプラ社)

 シリーズ4作目にして完結編。これまで通り、印刷依頼客にまつわる連作短編だが、弓子にもその周辺にも大きな変化が訪れる。
 いつまでも、マンネリになってもいいから、ずっと続けてほしいと思う暖かな作品ばかりのシリーズ。残念だけど満足。

寝ても覚めても: 増補新版(柴崎友香/河出文庫)

 映画見る前に再読。前回読んだときはややモヤモヤ感があったが、読み返してみてそれでいいのだと気づく。あらすじだけ書けばとんでもないお話なのだけど、それがどうしてこんなテンション低めな文章の羅列で書けるのか、おまけに章の終わりでは必ず目をそらされる。
 描写の積み上げを受けて読者の中にイメージが出来上がるのをじっと待ってるようで、つかんだと思った瞬間には引きずり回されてる。

それまでの明日(原りょう/早川書房)

それまでの明日

それまでの明日

 14年ぶりの新作、まさか出るとはというれしい驚き。沢崎もお話の展開も、以前のまま。
今回の依頼人は金融機関の支店長だが、調査の過程で沢崎は強盗事件に巻き込まれる。おまけに依頼人は行方不明、
 いつものメンバーに時間の経過が感じられるのが楽しい。最後の感じでは、さらなる新作を期待。

夏空白花(須賀しのぶ/ポプラ社)

夏空白花

夏空白花

 終戦直後に、夏の甲子園再開を目指し活動を始めた男たちがいた。食べる物も無い状況で何が野球かという批判の中、そういう時こそ子供たちに夢を! との思いで進める。甲子園は進駐軍に接収され使えない上に、米軍幹部はなぜ学生野球にこだわるのか理解されない。それでもあの手この手で対応する。

ふたりぐらし(桜木紫乃/新潮社)

ふたりぐらし

ふたりぐらし

 元映写技師で今は仕事もほとんどない夫と看護師として働く妻、夫はいまだに夢を追いかけ、妻は実家と折り合いが悪い。好きで一緒になったらそこで夫婦のはずだけど、生活を続ける中でだんだんと本当に夫婦になっていくという、じわじわとくる幸福感。
 一気読み厳禁、一日一編(全10編)と言われても。

大人は泣かないと思っていた(寺地はるな/集英社)

大人は泣かないと思っていた

大人は泣かないと思っていた

 農協に務める時田を軸にした連作短編、年代も性格も様々な女性がそれぞれ登場する。お話の舞台はやや田舎で、女は男に従え!的な雰囲気のある中、逆らいながらも居場所を見つけていく感じがいい。男が、女が、というのはあまり好きではないけど、それを逆手にとって書く著者の小説には惹かれる。

大人は泣かないと思っていた(寺地はるな/集英社)

大人は泣かないと思っていた

大人は泣かないと思っていた

 農協に務める時田を軸にした連作短編、年代も性格も様々な女性がそれぞれ登場する。お話の舞台はやや田舎で、女は男に従え!的な雰囲気のある中、逆らいながらも居場所を見つけていく感じがいい。男が、女が、というのはあまり好きではないけど、それを逆手にとって書く著者の小説には惹かれる。