春の庭(柴崎友香/文藝春秋)

春の庭

春の庭

 取り壊しの決まってるアパートに住む太郎は、同じアパートに住む女性が、隣接する家を覗き込んだり塀を乗り越えようとしてるところを目撃してしまう。
 これまでの作品同様、日常生活の中に潜むほんのわずかな奇妙さが、実に巧妙に語られる。大きな話も些細なことも、同じように、また時には扱いが逆転する。お話としては、どこにも行かない感じが、もどかしくもあり、楽しみでもある。