新月譚(貫井徳郎/文藝春秋)

新月譚

新月譚

 絶筆して何年も経つ女性作家のところに若手編集者が訪問する。彼はついに謎の作家と言われた彼女の半生を聞き出すことに成功する。
 一歩間違えば薄っぺらく安物の物語になってしまうような内容だが、この長いお話を一気に読ませてくれる。全編通じて、女の情念のようなものが根底に流れていて、お話に適度に重さと陰があるからだと思う。