かばん屋の相続(池井戸潤/文藝春秋)

かばん屋の相続 (文春文庫)

かばん屋の相続 (文春文庫)

 作者得意の銀行員もの短編集です。いずれも融資にまつわるお話で、どちらかというと銀行業務におけるダークサイドを描いたお話です。本来ならやりきれなくなる暗い話を、さらっと読ませてくれるのは、作者の視点がまじめでひたむきな銀行員の側に立っているからだと思います。だから読んでいて救われるのですが、一度この作者のに悪者側の視点で、思い切りどろどろした銀行員ものを書いて欲しいと期待してます。
ちなみに表題作「かばん屋の相続」は、京都の一澤帆布をモデルとしたと思われるものです。そういえば、あの長男も銀行員でしたね。