ルーシー・リー展 −ウィーン、ロンドン、都市に生きた陶芸家−

 陶磁器には詳しくないが、駅に貼ってあるポスターで見たきれいなピンク色に惹かれて観にいくことにしました。

恥ずかしながら ルーシー・リー というお名前はそれまで聞いたことも無く、まったくの前提知識無しで行った次第です。

 結論から言うと、とても素晴らしく行ってよかったと感じてます。理由は2つで、展示してある作品そのものが素晴らしく見とれてしまった事と、作者のルーシー・リーさんの活動姿勢を少しでも知ることができ、それがまた素晴らしいと感じたからです。

 作品そのものについての1点目は、まずは素人の私にでも分かるのは色の美しさです。陶磁器できれいな色を出すのがどのように難しいのか良く分かりませんが、あまり見たことの無いきれいな配色が印象的です。
 ポスターでも眼を惹くピンク色はいくつかの作品で使われていました。中には、ピンクをベースとして、そこにエメラルドグリーンの線が入ったり、ゴールドの縁取りがされたりしたものもあります。
 作品の特徴の2つめは、表面に描かれた線による文様です。全体に直線をくまなく引いた作品が、多くありました。線の引き方は、放射場だったり、同心円になってたり、一部が編み目になってたりします。またその線は、おもて面(内側)と裏面(外側)の両方に引かれているのですが、その両者のバランスがとてもいいです。どちらを見ても美しいですし、交互に見るとさらに楽しくなります。
 そして作品の特徴の3点目は、表面に溶岩のようなでこぼこのある作品群です。ボリュームを感じるだけでなく、その無数のでこぼこの中に、微妙な色の違いが潜んでおり、見ていて飽きない作品になっています。

 良かった理由の2つめの、作者のルーシー・リーさんの活動姿勢については、以下のようなことを感じました。
 その一つ目は、探究心とチャレンジ精神です。作品の特徴で挙げた、色のきれいさや溶岩のような表面は、特殊な釉薬によってうみだされています。その釉薬について、何度も配合を変えてテストしたり、新しい成分を加えたりして、多くの試行錯誤の結果、編み出されたものとのことです。また、陶磁器の製作工程自体にも見直しを行い特徴を出しているとのこと。
 2つめは、他人との関わり方です。他人のスタイルは尊重する、他人のアドバイスは謙虚に聞き入れる、その上で自分のスタイルを築き貫く、そんなことを感じました。また、芸術に関する価値観や方向性が合わない人とも、そのことと日常生活での親交とは分けて考えておられるようで、そこも素晴らしいと感じます。

 そして改めて思うのは、このような気づきを与えてくれるような素晴らしい展示であったことです。中に入って順路最初のコーナは、紹介ビデオでした。普通はこういうのは順路途中に休憩がてら見るものと思っていましたが、最初にこれを見ることにより、作品を見るための基礎知識が得られます。
 また展示内容自体も、作品だけでなく、作者の制作ノートや書簡などもあります。また、制作風景や作者と関係者のスナップなど写真も多く展示してます。このお陰で、作者を身近に感じる、作品の鑑賞の幅が広がる、作者に尊敬の念を抱く、といったいい循環ができたのではと思います。
 私のような凡人に取っては、展示の仕方によって作品や作者への評価が大きく変わってしまうことがあります。素晴らしい展示に出会えたことに感謝です。

 ルーシー・リー展は、大阪市立東洋陶磁美術館で、2/13(日)まで。美術館のHPに割引券あります。