スウィングしなけりゃ意味がない(佐藤亜紀/角川書店)

 ナチに支配され戦時中のハンブルグで、若者が敵性音楽であるジャズにはまり、ゲシュタポやユンカースの目を盗んで楽しむ。本当にこんなことがあったのかどうか知らないが、ナチ政権という異常時においても、人間としての普通の感情を持ち、それに従おうとする若者と、長いものには巻かれる大人。お決まりの構図なのに、スリリングで楽しい。